目を覚ますと、ものすごく豪華なベッドの上で寝ていた。
 まるで映画に出てくるお嬢様の部屋のようだった。
 そしてなぜか隣にベアトリーチェが寝ていた。何より問題だったのが二人とも裸だったことだ。
 なんでさ。
 
 風の聖痕 炎の記憶 アメリカの炎術士一家編
 
 今回の事件は昔、炎術士としての才能のないロベルトを馬鹿にしていたためマクドナルド家を出て行き。帰ってきてマクドナルド家に対して復讐を始めたというシンプルなものだった。
 もっともロベルトは魔術師としては優秀だったようで何らかの力で炎の精霊の上位種であるサラマンダーを封印した宝玉から炎の精霊を無理やり操作していたようだ。
 最初はいろいろな妖魔や罠を仕掛け正体不明の敵の仕業だったがいずれもベアトリーチェとキャサリンによって撃破されてしまったらしい。その過程で犯人がロベルトであることがわかったが結局どうすることもできずに例の巨人と戦うことになり、マクドナルドの本家にいた人間全ての力を集め例の怪獣大激戦になったわけだ。そしてそのピンチに僕が現れベアトリーチェを助けその後やってきたキャサリンに殴られたということになるらしい。
 
 事件解決を祝って現在飲み会の真っ最中、むだに広い庭で数十人の人間がバーベキューをしている。『これがアメリカンパーティーだ!』みたいな事を言っていたが本当にそうなのかわからないがとにかく皆騒ぎながらお酒を飲んでいた。
「いやぁ、ほんと今回の事件が解決してよかった、よかった。」
 そういって僕の背中をばしばし叩く男性はマクドナルド家当主のクリストファー・マクドナルドである。彼の見た目は映画「ターミネ−ター2」の主演男優と同じような体系をした男性だった。とても50代とは思えない体つきだ、またひげも豊かでまるでどこかの山男のようだ。とても美女と美少女の親とは思えない、きっと二人は母親似だろう、と失礼な考えが出てしまう。
「いや〜、ほんとジューゴはいいタイミングで助っ人を連れてきてくれたぜ。」
 彼は大ジョッキに入ったビールを一気に飲み干しまた背中をばしばし叩く。
「いえ、たまたまいいタイミングだっただけで僕がいなくてもキャサリンさんがベアトリーチェさんを助けていたはずですよ。」
 僕の苦笑しながらの返事に「かぁ〜お前いい男だなどうだうちの娘どっちかもらってくんないか。」などと言い出した。ちなみに彼のこのセリフはパーティーが始まってお酒を飲みだしたあたりから何度も言っている冗談のようでもう既に十は聞いたような気がする。
 ちなみに彼には息子はいないらしく二人の娘だけしか家族はいないようだ。妻は二人目の子供を生んだときに亡くなったらしい。そのため二人の娘を過保護に育てすぎたようでさらにキャサリンの婚期が過ぎそうな予感(まだ二十五だが)を感じているこのごろは逆に婿探しを探しているそうな。さっき一緒なって絡まれていた男性から聞いた話だ。ちなみに彼は僕がターゲットにされたときには既に別のところに言っていた。どうやらクリストファーさんは絡み酒らしい。さっきあったときは鋭い眼光と山のような存在感でまるで重悟様が本気で話しているときのような感じがしてびびったが、今ではただの娘自慢のお父さんだった。
「かぁ〜感心するぜ。その年で既に修行のたびに出るた〜。俺たちに若いころを思い出すぜ。どうだベティ、この男に決めね〜か。お前と同じ年の男でこんな男はそういないぜ。」
 相変わらずの彼の言葉にいつのまにか隣にいたベアトリーチェは真っ赤になりながらもじもじたあと小さな声で「はい」といった。ていうかそんな簡単に返事するなよ、一日しかあったことのない男と結婚するとか正気じゃないぞ。
「そういえばジューゴは元気か、あいつ無茶ばっかりするからな。死んでなければいいが。」
 そういって、わはははは……と笑う。どうやらクリストファーさんは十代のころに重悟様とコンビを組んで修行の旅をしていたらしい。どうやら二人とも立場が似ていたようで気があったそうだ。
 もっとも僕の中では今の二人を合わせたら娘自慢が延々と続くことだろう。
「さあもっと飲めコースケ。」
 どうやら彼は日本語の発音が苦手らしく名前がうまく言えていない、ベアトリーチェやキャサリンはうまく言えているのだが。
隣のベアトリーチェからお酒が注がれる。未成年なのでというと「気にするな」といわれ飲まされていた。もっとも僕のほうもそれ自体は建前で、まだお酒をおいしいと感じることはできないのだ、兄に言わせるとなれればうまいらしい。
軽く口をつけるだけでは目の前の彼が許してくれないので、グイッとビールをあおる。僕はいつの間にか浴びるようにお酒を飲まされてふらふらになっていた。
「すいません、ちょっと飲みすぎました。」
 そういうとクリストファーさんは「だらしね〜な〜」といったあと。
「ベティ、コースケを寝室に連れて行ってやれ。」
 その言葉を聞いた彼女の眼が一瞬キランと輝いたような気がしたがどうやら酔ったようだと思いそのまま彼女に連れて行かれることになる。
 
 ここまでがはっきり覚えているところだった。
 そのあとのことはあまり覚えていない。ただものすごく気持ちよかった気がするのは気のせいだったらいいな。などと考えていると。隣で寝ていた少女が目を覚ましたようだった。
「おはようございます、康介様。」
「お、おはようベアトリーチェさん。」
 自分の顔が引きつった笑いだということはなんとなく気づいていたが気にしていないようだ。
「康介様、私のことはベティでかまいませんと昨日言ったではないですか。」
 わかってるよ、なんとなく昨日の夜なにが起きたか。それでも否定したいのは仕方ないことだろ。
「昨日は、昨日は痛かったです。今度は優しくしてくださいね。」
 彼女はシーツについた赤いしみを見て真っ赤になった。
 僕はシーツについた赤いしみを見て真っ青になっているだろう。
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