見回すと周りには青い卵がたくさんいる。
 しかも動き回ってうるさい。ススムくん曰く地底人たちはどうやらサボり癖があるみたいで仕事をサボって昼寝していると地面(地底?)が隆起していつのまにか地上付近まで来てしまったらしい。
 
 風の聖痕 炎の記憶 「Mr.ドリラー」とエジプトで穴掘り編
 
 隣の彼はものすごいスピードで掘り進んでいく。
 とりあえずススム君の後ろについていくが彼だけ見ていると危険だ。
 さっきは彼に「危ない」といわれて手を引かれた。直後自分のいたところにものすごい音を立てて岩が落ちてきた。
 こっちをまったく見てないのになぜ分かる?
 疑問に思い彼に聞いてみると。
「岩がある位置や落ちてくるタイミングは分かりますから。なんていうか直感って奴です。」
「ススム君の直感は未来予測なみだワン。」
 二人はそんなことを言っていたがどっちかというと誰かに操られているような動きだ。
 とにかく自分の能力全てを使って上下前後左右を確認しながら進む。
 なぜ僕がこんなことをしているかというと二時間ほど前にさかのぼる。
 
「ところでススム君は何でこんなところにいるんだい?」
 ススム君とプチは互いを目配せをしあったあと仕方ないといった顔をして事情を話し始めた。
「実はですね、今までの地面隆起事件はすべて地底人の仕業なんです。」
その言葉に僕は唖然とする。地底人なんてそんなオカルトじみた話信じる人間はいるのかよ、なんて思ったがよくよく考えてみると自分たちの存在こそオカルトじみていることに気がつく。
「地面の製造量を増やしすぎたからこんな事件が起きるんです。でも地底人たちはそんなこと気がつかないから、直接いいにいくしかないんです。」
 その言葉を聴きまわりを見回すと地底人(仮)たちは相変わらず回りでおしゃべりをしていた。
「工場の製造量を決めることが出来るのは王様だけなんで今から王様のところに行ってるんです。何でもエジプトの地下に観光旅行に来ているらしいんですよ。まったく地面の下なんてどこも同じなのに。」
 確かに地面の下なんてどこも同じだと思う。
「ところで康介さんは何でこんなところにいるんですか?」
………一般人に話していいのだろうか?
ていうか、彼一般人か?まあ精霊魔術のことはなしても大丈夫そうなので事情を話すことにする。
 ………………
 …………
 ……
「要するに康介さんは地底人が大地の精霊に見えるから、彼らと契約した言ってことですか?」
「まぁ、ぶっちゃけていうとそんな感じだよ。」
「そうですか大変ですね。基本的に彼らはいい地底人ばかりなんで話は聞いてくれると思いますよ。」
 そういうとススム君は地面を掘り始める。まるで彼の名の如く。
 僕は遠くで雑談をしている地底人たちに話しかける。
「こんにちは、大地の精霊さん。」
「やぁ」「こんにちは」「こんにちは」「おぉ地上人だ。」「よぉ」「こんばんは」「おはよう」「こんばんは」「こんばんは」
 挨拶がばらばらだ。なぜ?
「実は僕は精霊魔術士なんですが、実は誰か契約してほしいんです。」
 ざわざわざわざわざわ
「むり?」「無理だよ」「無理だね」「うん、無理だ」「まぁ、無理だね仕方ないね。」「うん無理無理。」
 う、うざい。
「あの、誰か一人が代表して話してくれませんか。」
 ざわざわざわ……ざわざわざわ……
 数分後の話し合いのあと一人が前に出てどこからか取り出したリと書かれたバッチをつけてこちらに話しかける。
「代表して私が。え〜とですね、我々はあなたの要求をかなえることが出来ません。なぜなら私たちは………え〜となんだたっけ?」
 ざわざわざわ
「あ、そうだそうだ。我々はそんな面倒なことしたく…………じゃなくて、王様が仕事を振り分けているんで王様にそういうことは話してください。」
 ……………
「それなら王様はどこにいるんですか?」
「王様なら下にいますよ。大体地下千五百メートルくらいにいますよ。」
 ち、地下千五百メートル。今大体五百メートル下ったから。全部で二千メートル。
 ススム君は一人でそれだけ掘り進むのか?
 少し唖然としながらススム君が掘っていった穴を見る。
 ごごごごごごご…………
 謎の地鳴りが起きる。すると突然地面が消えた。
 もちろん地面が消えたら地面の上に立っていたものは落ちる。
 !落ちちゃ駄目じゃん。
 僕は空中で姿勢を出来るだけ正しくして落ちる。全身で風を受け落下する。
 約百メートル。直線距離はそのくらいだろう。分かりやすくいうと東京タワーが333メートルだったからその約三分の一。逆に分かりずらいか?
 などと考えていると早くも地面直前になる。僕は落下地点に炎を置きその上に着地する。炎はやわらかいマットのように僕を受け止める。衝撃をすべて逃がしてから炎を消す。
「いったいなにが。」
 死の危険を何とか回避して周りを見る。そこにはススム君がいた。
「あ、康介さん。まだいたんですか?」
 ススム君は僕のほうを見る。
「ススム君、僕も王様に会いに行くよ。」
 ススム君は少し驚いた顔をするが、僕の決意の表情を見てうなずいた。
「分かりました。その代わりちゃんとついてきてくださいね。」
 僕とススム君はがっちりと握手する。後ろではつぶれた地底人が拍手をしながらもとの形に戻っているのはシュールな光景だった。
 こうして僕も穴掘りをすることになる。
 
 ちなみに僕も全身タイツとドリル着用はここだけの秘密である。
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