目の前にあるのはまるで一昔前のSFに似た無駄にでかいマシーンに似ているなぞの建造物がある。
中からすごい量の精霊がいるのが分かる。
風の聖痕 炎の記憶 「Mr.ドリラー」とエジプトで穴掘り編
掘った。あぁ掘りまくったさ。
休まずに約三十時間。ただいま地下1900mのところにいます。
ススム君と一緒に掘り続け、なかなかナイスなコンビネーションをとることが出来るようになった。もっともそれでもやはりススム君が一人で掘ったほうが早そうだったが彼は快く僕のことを助けてくれた。
周りには自称地底人たちが約百人以上いる。みんな仕事をサボっていたらしい、困難でいいのか大地の精霊! 精霊って世界のバランスをつかさどっているんじゃなかったけ?
それともこれだけの数の精霊がサボっているからこんな事件が起こったのか?
「康介さん大丈夫ですか?」
「あぁ、ススム君まだ大丈夫だよ。あと百メートルだろ一気にいこうじゃないか。」
そういって僕は親指を立てる。
ススム君も僕に向かってサムズアップする。
「それじゃあ一気にいきましょう。」
その言葉に僕は返事をする。僕たちはドリルを持ってまた穴を掘り始めた。
そこは不思議な空間だった。
どことなく懐かしくそして暖かい。
隣のススム君はここに着くと同時にどこか走り去ってしまった。一緒に落ちてきた地底人もすぐにどこかに行ってしまった。
ここは地下2000メートル、地底人たちがここで仕事をしているらしい。
僕もいなくなったススム君を探して僕も地下を歩き回る。
周りには不思議なものすごくでかい機械とベルトコンベアーがあった。
「王様、まったく何度言ったら分かるんですか! 地上に色ブロックがあふれて大変なんですよ。」
声がするほうに歩いていくとそこにはススム君と普通の地底人より少し大きく、またヒゲと王冠とマントをつけたでかい青い卵がいた。見た目のその力もほとんど他の自称地底人たちと変わりない。」
「いやぁすまないススム君。一応気をつけていたつもりなんだけど、いつのまにか製造量が多くなりすぎていたみたいだよ。」
な、なんて軽い会話。本当に世界各地で起きている問題の原因の話なのか?
「わかったでは今すぐにでもブロックの製造をやめることにしよう。」
王様?がそういうと同時に周りで動いていた機械が一斉に止まる。
「これで世界中のブロックの生産が止まったはずだ。これでいいかい?」
「本当に止まったんですね、まったく王様ちゃんとしてくださいよ。あ、そういえば。康介さん!康介さーん!こっちです。こっちに来てください。」
遠くからススム君が僕のことを呼ぶ。
「おぉこんなところに人間なんて、ススム君以来キミがはじめてだよ。はじめまして、私が王様だ。」
自己紹介で王様って……
「王様、康介さんが王様にお願いがあるそうです。」
ススム君の言葉に王様の目がきらんと光る。
「ほほほ、私にお願いかい?さぁ何でも言ってごらん。こんなところにくるのだからよほど私にしか出来ないようなお願いなんだろ?」
王様は明らかにうきうきした顔をしながら僕に話しかける。
「え〜っとですね。実はですね、僕は精霊魔術師なんですけど誰か僕と契約してもらえませんか。」
………………
…………
……
王様はものすごくがっかりした顔をしている。
「なんだそんなことか。……もっと面白いことだと思ったのに。たとえば復讐とか復讐とか復讐とか」
なぜ復讐にこだわる。
「あの、駄目なんですか?」
僕の言葉に王様はぶつぶつとつぶやいていたのを辞めてこちらを向く。
「あ〜契約ね、契約〜。」
そういって王様は僕の目をじっと見つめる。
そして数秒後。
「うん、無理。」
あっさり言いやがった。
「キミ炎の精霊王との契約者との末裔でしょ。契約者、またはその加護を持つ人間と契約するのはいくつかの例外のほかは難しいんだよ。」
その言葉に僕は脱力し膝と手を地面につける。
ススム君が僕を慰めるかのように肩を叩く。
「まぁせっかくこんなところに来たんだから。何も得ることが出来ずに帰るのもアレだから君にはこれをあげよう。」
そういうと王様は例のSFばりの機械のほうを向くと機械が「ばこん」と一回だけ音を立てて色ブロックを吐き出す。
王様はそれをグネグネといじくり回す。そうすると少しずつ小さくなっていく。そしてそれは手のひらの中に納まった。
「はい」
そういって王様は僕に向かってなにかを投げる。僕は飛んできたそれを両手でキャッチする。
「あのこれは?」
それは土色の指輪だった。
「それは土星輪。その指輪をつけるとなんと一流の地術士並に精霊を扱うことが出来るという不思議アイテムだ。もっともそれなりに才能がなければ使えないだろうがな。」
「あ、ありがとうございます王様。」
そういって僕はその指輪をつける。
それをつけると同時にものすごい情報量が入り込んでくる。そうして僕の脳がシャットダウンするように意識を失った。
ちなみに気絶する直前「今日は祭りだ。さあススム君今日は君の歓迎会だ。」というせりふが聞こえた。
ぱちっと目が覚める。
世界がものすごくクリアだ。なんというか周りの様子が手をとるように情報を得ることが出来た。これが地術士の視界、今までの視界はまるで目隠しをしていたように感じてしまうほど回りから情報を得ることが出来た。
そこはいつの間にか地底ではなく地上のどこか山の中だった。
「ここは一体。」
そう呟くと同時にこの手に入れた力を活用したくなる。そう考えて指輪から世界を見る。大地を基点に半径二十数キロを調べることが出来た。コンクリートや鉄はまだ操作するのは難しそうだが練習さえすればきっとすぐに操作することができるようになるだろう。
そんなことを考えながら町に到達する。どうやら意外と町と近いらし。聞こえてくるのは日本語。僅かに除くコンクリートの間の地面からそこが東京だということに気がつく。
タイツからのぞく顔に冷たい風が吹き付ける。さらに町の様子からもうすぐクリスマスのシーズンだということに気がつく。
どうやらいつまでたっても起きない僕を日本までつれてきてくれたようだ。
大地の精霊たちの心遣いに感謝すると同時に、行方不明になったんだろうな〜、なんて考えてしまう。
ただせめて僕の服は帰してほしかった。
仕方なし僕は全身タイツで神凪の屋敷に帰ることになった。