少年と呼ぶには年をとっていた、青年と呼ぶには若すぎる。彼はそんな感じの年頃の男だった。
 彼は振り上げた腕を一気に振り下ろす。
 ちょうどその延長線上にいた僕はその線上から少し体をずらしてよける。
 何かが風を切り裂く音が聞こえる、しかしその何かは気配だけしかない。
 同時に「がきん」と何か固いもの同士がぶつかり合った音が走った。音のした所を見るとアスファルトが少しかけていた。
 自称「妖剣使い」。先ほど彼が名乗った自称はこのことを言っているのだろう。不可視の剣、其れが彼の手に入れた力だろう。
 彼は驚きの表情を見せる、たぶん自分の攻撃が紙一重でよけられるとは思っていなかったのだろう。
 僕は彼との間合いを一瞬で詰める。
 彼は慌てて腕を横に振るが、その動きを見切って身をかがめてかわす。
 僕は完全に彼の懐に入り込み、零距離からの拳による攻撃。気の乗った一撃は彼の腹に完全に決まり彼の意識を飛ばす。
 僕は彼の嘔吐物を避けながら後ろを振り返った。
 ちなみに今の技はこの前呼んだ「修羅○刻」に乗っていた技だったりする。まさか実戦で使えるときが来るとは思えなかった。
 
 風の聖痕 炎の記憶25 漫画で出てくるような技は隙が大きすぎて実戦では使えない
 
「ご苦労様、康介くん」
 僕が倒した男を見つめていると、後ろからひょっこりと現れた由香里嬢。
 左手には携帯電話、多分すでに霧香さんに連絡を入れているのだろう、あと数分もすれば誰かが彼の身柄を引き取るだろう。
「あのさ、由香里さん。こういうのは危険だからやっぱりやめよう」
「なに言ってるの、康介くん。せっかく戦える人間がいるんだから積極的に戦力を投下しないと事件は解決できないのよ」
 由香里嬢はこちらに近づきながら台詞を続ける。
「それにわたし一人で調べられるインターネットからの情報なんてほとんど役に立たないんだから、やっぱり実地調査が必要なのよ」
 そういって彼女は僕に対して色目を使いながらにじり寄って来る。
 あぁ、ごめんベティ。一瞬でも誘惑されかけた僕を許してくれ。
「さぁ、次行くわよ。次は「鋼糸使い」の近衛、って人よ。ホームはここから一キロ先の裏路地よ」
 そういって彼女はさっさと歩いていく。まったくなんでこんなことになったんだ。
 
 
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